不整合性と寸法に見るセナンク修道院の中世における建設

2017-03-24

2017-03-24

本研究は、中世シトー会修道院の中でも有名なものの一つであるセナンク修道院の建築を例として、その建築的特質を明らかにしようとした論文である。セナンクの建築を自ら詳細に実測し、正確な実測図面を作成し、かつ詳細に現地での観察を行い、こうした考古学的な調査を基にこの建築が実際に中世の時代にあってどのように建設されてきたか、そして中世の職人が建設の際何を重要としたのかに着目したものである。　この修道院の12世紀の中頃から13世紀の初めにかけて建設された、いわゆる中世建築の箇所には、比較的統一した計画をもって、同じ寸法や同じ形状で作られるのが通常であるような箇所に、例えば石目地や平面の形状にずれや歪みなど本稿で言うところの不整合が数多く存在する。　本論文の結論は、従来我々が抱いていたシトー会建築あるいは中世建築のイメージをかなり覆すものである。少なくともセナンクに限って言えばこれまでの既往研究等が我々に伝えるイメージとは大きく異なる。セナンクを例に、多くの不整合性、改変、異なる職人集団に対応する複数の物差しの使用など、およそ近代の合理的な考え方を是とする一貫した統一性を持った建築とは全く異なる建築の在り方について明らかにしたものである。また、不整合や物差しといった要素が、こうした考古学的研究の有効な道具であることも示し得たと思う。建設の実態に即した詳細な建設プロセスの提示と不整合も忠実に表現した実測図を作成したことが本研究の最大の意義である。

博士（学術）

京都工芸繊維大学

14303甲第833号

http://hdl.handle.net/10212/2390

jpn

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Thesis or Dissertation

Thesis