パブリックアートの「恒久性」に関する一考察

2014-09-25

2014-09-25

新たな常設のあり方を考えなければならない時期にきている今、パブリックアートが「恒久的に」設置されるあり方を、1) 都市的な機能を合わせもつことにより「有益な」アートになること。2) その土地、その場の歴史や記憶を作品化することにより、モニュメンタルなアートになること 3) 物質的存在としてではなく、人びとの記憶に残ることをもって「恒久性」を獲得するアート といったカテゴリーに事例を振り分けて分析。 本論文では、この3点を含んだ恒久性という概念を、パブリックアートに提示した。単にものが永続するということが自明のように思われていたが、実はそうではない事例がいくつもある。しかしその際、それを例えば機能を付与することによって、恒久性を獲得しようとする方向性や、サイトスペシフィックな感じで場所との関わりの中で恒久性を獲得しようとしていたり、インスタレーション的なもので、恒久性ということを単なる物質的な問題ではなく、幅広くとらえることでパブリックアートの恒久性というものがあらたに論じられるようになってきた。恒久性とは、単にものとして存続していることを意味するのではない。我々には、変化していく社会の実情や作家の考え方に応じて、作品の見方を変えていくことが求められている。今日、作家は、プロセス型の表現や社会環境との関わりを重視し、パブリックアートの新しい可能性を探っている。
　公共物および公共空間に関わるパブリックアートは、基本的には個人の考えだけで成しえるものではない。そのため、パブリックアートには自ずと多くの人間が関わっていくこととなる。パブリックアートは私的行為にとどまる作品であってはならない。パブリックアートは、社会や他人を巻き込んだ活動の過程を含めて一つの作品となっている。ものとしての作品は取り壊されたとしても、鑑賞者の体験はそれ以後も彼らの中に内在し続け、さらに何らかのかたちで展開していく可能性をもつ。
今日パブリックアートは、地域の既存のコミュニティを横断し、新たな関係性をつくりあげるための拠点となる役割を果たしている。パブリックアートと関わり合うことで、個人はパブリックアートに加わることにより、新たな経験や価値観を獲得し、作品は変化しながらいつまでも存続するという特殊な恒久性を得ることとなる。

博士(学術)

京都工芸繊維大学

14303乙第193号

http://hdl.handle.net/10212/2229

ja

none

Thesis or Dissertation

Thesis