岡本太郎・主体性の神話

京都工芸繊維大学

2010-12-16T05:57:04Z

2010-12-16T05:57:04Z

2010-11-12

「主体性」は、戦後日本の美術を代表する岡本太郎にとっての主導的概念であるが、それはまず、いかなる権威にも依拠することなく、「わび」や「さび」などの伝統的理念を否定することに、己れの存在基盤を見出す個人を指しており、岡本のみならず、多くの戦後荒廃期の知識人・芸術家たちによって、生と思考とを導く基本概念として分けもたれた。 本論は、まずこの概念の構造を分析した上で、主体的個人としての岡本と伝統文化との間の対極主義的関係を解き明かそうと試みた。それによると伝統は、岡本において、単に否定さるべき対象ではなく、彼自身の芸術創作にとって不可避的条件を構成している。さらに本論は、岡本の主体性概念を、テクノロジーの発展がもたらした生の基盤の喪失を埋め合わせる神話と捉え、その歴史的意味と限界について考察した上で、沖縄の聖地・御嶽での彼の経験の内から現代のテクノロジーとは異なる作ることの可能性への問いを立てようと試みた。 全体を見れば明らかなことだが、本論は岡本の歴史学的再構成を目指したものではなく、彼が残した言説との批判的対話の試みであって、筆者自身たびたび批判してきたような、思想を影響関係の地図の上に位置づけることによって理解したとみなす安易で不毛な営みとは無縁なものであることを断っておく。

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京都工芸繊維大学 学術報告書,第４巻,2010.11,pp.73-92

1882-8779

http://hdl.handle.net/10212/2028

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